これも面白い(10)

「百舌谷さん逆上する」(篠房六朗)

月刊アフタヌーン掲載中のツンデレファンタジーです。(勝手に命名)
この作品は所謂「ツンデレ」を「他者への好意を、自己の感情に反した攻撃的な言動で表現してしまう人格障害」と定義し、物語のヒロインであるツンデレ少女・百舌谷小音(もずやこと)は「ヨーゼフ・ツンデレ博士型双極性パーソナリティ障害」という障害をもった女の子として扱います。

いやぁこういう風に「ツンデレ」を障害として扱うって新しいですよねw
でもこれ初めはコメディ系なんだろうなと思って読んでたんですが、実はかなり複雑にして内容のある作品であることが3巻まで読むと判ります。1、2巻までだと3巻への複線として真面目な話が少し折れ込まれてるんですが、それがコメディオチとしてのネタに見えてしまうので、まだこの作品の本当の良さは判らないと思います。

正直2巻まで読んでもういいかなと思った30号だったのですが、危うく良作を逃すところでした(汗)小説とかだとこういう初めゆっくり、中盤から盛り上がるっていうのは結構あるんですよね。小説を読むときはなるべく注意して読んでるんですが・・う~ん見切りのつけ方って難しいなぁ。

さてもう少し詳しくこの作品の内容を書いてみます。
まずヒロインの百舌谷さんですが、ツンデレという症状なので素直にコミュニケーションが取れません。本当は仲良くしたい同級生にも正反対の言葉で突き返してしまったりするので、クラス内で浮いた存在になります。その結果ツンデレっ娘として馬鹿にされたりからかわれたりしてしまうのですが、彼女は逆に他者を上から目線で見ることによって独自のバリアを形成します。達観したように人を寄せ付けようとしない百舌谷さん・・この辺、彼女の心境を考えると何とも切ないです。自分を取り巻く全ての世界との接触を絶望視する・・彼女はそういう世界に幼少時代から投げ込まれているわけです。

そんな百舌谷さんですが、新しく転校してきた学校で一人の友達(奴隷?下僕?)が出来ます。名前は樺島番太郎(かばしまばんたろう)一見して裸の大将然としたこの同級生が、百舌谷さんと一緒に行動していくことになります。ある時はサンドバック・・またある時は黒子として百舌谷さんを支える番太郎。彼が何故友達が全く出来ない百舌谷さんの傍にいられるのか?
それは彼が真正のドMだからですw

百舌谷さんに友人が出来ない理由の大きな一つに、症状として攻撃的な言動や行動を取るというものがあるのですが、この行動がかなり常軌を逸しています。例えばテーブルやイスをぶん回して投げたり、躊躇なく最大パワーで顔面をストレートパンチしたり、凶器を持って~を~したり・・ともはや普通の人間は近づけません。

そんな中、ドMの番太郎は唯一その暴力を無効化し・・いやむしろプラスへと転化します。こんな両極端な二人だからこそ成せる関係は、少しふざけた不思議な関係としてそれとなく描かれていますが、段々百舌谷さんに笑顔が出てくることからも察せるように、彼女にとって凄い意味のある関係であることが判ります。

ということでこんな二人を軸として物語は進んでいくのですが、さっきも書いたように2巻まではかなりコメディ要素の強い内容になっています。ここまでだとツンデレという症状がもたらす真の苦しみがまだまだ判りません。それが判るのが第3巻で、百舌谷さんの過去が少しずつ描写されていきます。ネタバレになると読んだときの感動が半減するので詳しく書きませんが、えっ?この作品ってこんなんだったの!?とびっくりさせられると思います。また舞台の季節が夏の終わりっていうね・・もう切ないです。

個人的にはヴォネガットの「スローターハウス5」からの引用が出る辺り鳥肌立ちました。
「神よ 願わくばわたしに変えることのできない物事を受け入れる落ち着きと 変えることのできる物事を変える勇気と その違いを常に見分ける知恵とをさずけたまえ」

読んだことある人は判ると思いますが「スローターハウス5」も凄い内容ですからね・・この言葉の意味の重さといったら。3巻にはこういった感動シーンがふんだんに詰め込まれてます。さてちょっぴりしんみりとしちゃいましたが、現在第9巻まで出ているこの作品なんですが、30号はまだ5巻までしか読んでいません。3巻までは読んだ方がいいというのは声を大にして言えますが、4,5巻がまたゆったりペースに戻ります^^汗 気になってちょっと調べてみたらこの先もだいぶそんな感じで、最新巻あたりからまた大きな波が来るようですね。

そうそう表紙のカバーを外すと作者の篠房さんのちょっとした日常マンガが読めるのですが、かなりマニアックな方らしく読んでる本が面白いです。30号的にそういう意味も含めて百舌谷さんは終わるまで読んでいこうと思います。
ということで「百舌谷さん逆上する」の回でした!

ツンデレって深いねぇ~