アイ(いがらしみきお)

アイ

「アイ」(いがらしみきお)

2011年発売月刊IKKI掲載作品です。

この作品・・個人的に衝撃の一作です。最近読んだ作品だと「あっかんべぇ一休」以来の衝撃!そうこれは今までのいがらし作品(ホラー)とは一線を画した哲学的な作品です。30号は「ぼのぼの」以来、他の氏の作品(ほとんどホラー)も色々と現在進行形で読み続けているんですが、この作品は氏の集大成といえるほどのものだと感じました。

まさかここまで考えていたのか・・と思わされる数々の独白やセリフ。

この作品を読んでいがらしみきおという人に対するイメージが、自分の中でがらんと一変しました。もう「ぼのぼの」の作者じゃなく、生粋のホラー作家としてのイメージへ、あるいはそれ以上の何か。

言いたいことは色々あるけど、その前にまずどういう作品なのか簡単に紹介しておこうと思います。まずは超概要です。

 

(超概要)不思議な能力をもつイサオと、世界について問い続ける雅彦二人の神様探しの旅。

 

普段ならあまり書きませんが各話タイトルです↓

第一話:ここはいったいどこなのだろう

第二話:どんな幸せなことがあったろう

第三話:誰のこともわからない

第四話:きっと誰も見てない

第五話:ゆっくり息をしている

第六話:できるようになったのだろうか

第七話:名前を呼んでいた

第八話:ただ呼吸するだけ

第九話:誰も見てないところ

第十話:そこは真っ暗で

 

それでは内容へ。

 

(イサオは 生まれる前から目が見えていた。)

(だから生まれてはじめて見たものを覚えている。)

(それは天井だった。)

(そして自分の手足を はじめて動かしたときのことも憶えていると言っていた。)

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(母親がイサオを妊娠した時に イサオの父親はどこかに失踪してしまっていた。)

(母親はイサオをどうするつもりだったのだろう。)

(母親が便所の前で死んでいるのを見つけたのは イサオの叔父だった。)

 

(その時のイサオはとても楽しそうに笑っていたという。)

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(庭の雑草の暗がりの中に なにか見つけたのだと言う。)

 

物語の主人公の一人イサオですが、対してもう一人の主人公である雅彦は、家は医者という裕福な家庭環境にあります。

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そんな誰しもが羨む恵まれた生活を送っている雅彦ですが、

本人は常にあることを黙考して苦悩しています。

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(家が医者だからなのかどうか知らないが、オレはいつか自分の心臓も止ってしまうのだと思っていた。)

(毎晩心臓のことばかり気にして、一睡もできないこともあった。)

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(この世は謎だらけだった。)

(オレはなぜ生まれてきたのだろう。)

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(そしてこの世界ーーーーーー)

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漠然と開かれた世界に疑問を投げかける雅彦。

そんな雅彦はある事件を契機に、イサオに興味を惹かれていきます。その契機とはイサオの叔父さんの首吊り自殺。酒乱でイサオを虐待していたいう噂もあるその叔父さんは、ご神木の一番てっぺんにある枝に吊るされた状態で発見されます。その事は大人たちには自殺と断定される一方、同い年の子供達にはそうは思われず、イサオが殺したんだとイジメの標的にされてしまいます。

 

雅彦(死んだらどうなるのだろう)

(死ぬってどういうことなのか いつか誰か教えてくれるのだろうか。)

(親が?学校で?なにかの本に書いてある? でもだんだんわかってきた)

 

(ほんとはみんな なにも知らないまま生きているのだ。)

 

叔父のいなくなったイサオはその後、栄養失調で倒れているところを発見され雅彦の家へやってきます。しかし、家の中は人の作ったものしかないと言い外で寝るイサオ。尋常じゃない行動ばかりするイサオに、さすがに雅彦も戸惑いが隠せません。そんな中また新たな死亡事件が起きます。それはイサオを率先してイジメていた少年。そしてさらにその後、二人が世話になった担任の先生・・というように身近な人の死が二人の周辺で次々と起きていきます。

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二人はここから様々な人の死に立ち会いながら”トモイ”を探す旅に出ます。

”トモイ”とはイサオが産まれた時に見た何かで、それをイサオは神様だと言います。果たして二人はその神様を見つけられるのか?そして雅彦の世界に対する問いは解決するのか!?

 

という感じが前半の大まかな流れです。

ここからさらに哲学的な話になっていくんだけど、特に2巻の”岡島人間農場”が出てくる辺りはもう凄いことになっていきます。まさか漫画でここまでのものが読めるだなんて考えもしませんでした。この作品のポテンシャル桁が外れてます。こんな作品今まで読んだことないかも・・

 

さてここからはちょっとした感想です。

こんな作品だし読んだ人はどう思ったんだろと、評価も兼ねて色々ネットを見てみました。やはり大方の評判はいいようです。でも感想がなんか物足りない気がしました。この作品はもちろん読む人によって色々思う所はあると思うけど、個人的にまずはずせないのは一話のタイトルにして、雅彦の独白シーンでもある「ここはいったいどこなのだろう。」です。目の前にさも当たり前のように存在する世界。当たり前のはずだけど実は何もそのことを知らない自分。そんな自分の周りで、さも当たり前のように暮らしている誰かたち。そうこの作品の本当の怖さはここにあるんだと思います。

まさに実存そのものがホラーだと言わんばかりですが、個人的にそう思っていた節もあり、作品を読んだ後の衝撃がそれだけ凄まじかったです^^;おっ同じこと考えてる人いたーwwという感じ。それと同時にこの怖さって絶対全員には伝わらんだろうなという一抹の寂しさなども抱えている次第ですが、現象そのものにホラー焦点を当てた本作品・・やはり他作品とは一線を画してると思います。果たしてこれ以上のホラー作品がこれから出てくるのだろうか!?

 

ということで長くなりましたが以上。

超絶ホラー作品「アイ」の回でした!全三巻。個人的殿堂入り作品です。

本当の怖さって身近にありすぎて気がつかないもんなんですよね・・キヒヒ